2008年12月4日木曜日

いい奴なのだが、しかし

どうしてこの学校って、やたらとクラス旅行が多いのだろう牡丹皮 片 。しかもみなマイクロバスときた。遠距離なんだから、みな素直に汽車を使えばいいのに。そっちの方が景色も楽しめるし、ゆっくり坐れるし麻黄 、なんてったって酔わない。学校側だって、旅行費が安くなるんだからいいんじゃないだろうか。狭いコピー室で次から次へと刷り上った用紙をテーブルに置きながら上総は本条里希(ほんじょうさとき)評議委員長に意見していた陳皮 。この日はどうしてもコピー機を一人で占拠したくて、登校届を出していた。本条先輩が一緒にいるのは偶然だ。たぶんどこかへ繰り出そうと誘いたがっているんだろう。どうせ夏休み、上総は暇だった。知らん振りして原稿を三十五部ずつ刷り上げた。せめて今度の地黄 冬の評議委員会合宿は、公共機関を使いましょう。だめですか当たり前だろ、駄目にきまってる。よく計算してみろ。実はマイクロバスの方が安上がりだってこと知らんのか。旅行会社もちゃんとそこのところは計算してくれるんだそうだ山茱萸。それに考えてみろよ。俺たちみたいな『見た目優等生中悪党連中』が集団で移動してみろ、絶対に修羅場が起こるはずだ本条先輩は絶対、修羅場を作り出しているだけだ。どこかの女子に声をかけて悪いことをたくらんでいるに決まっている。だめでもともと桑白皮、言ってみたかっただけ。上総はわざとらしくため息をつくと、さっそく大量のコピー紙を一枚一枚折り始めた。端から端まできちんとたたんで。合計枚近く六百枚弱。ページ数二十ページ。本当だったら同じ評議委員相棒の清坂美里に手伝ってもらうのが筋なのだが黄連、どうもそんな気になれない。美里だってそうとう女子の取りまとめで忙しいはずだ。本条先輩が一枚摘み上げ、ふわっと両手の上に置き目を通し始めた。なんだ、こりゃうちのクラスで作った、しおりです。俗にいう『歌集』って奴ですか渋いもの杏仁作るねえうちの担任の趣味です。最初の注意事項およびバスの席順以外は、他の連中がみんなこさえてくれたもんですから。とりあえずあとは金具で留めて、明日中に全員に配って。口頭で注意事項を説明して、それで終りですバス、およびホテル部屋の席順決めはすでに決まっていた。上総が面倒を見なくてはならないの甘草は男子だけ。助かった。二年D組の男子はあまりうるさいことを言わないし、上総も大体長い付き合いだから、呼吸は飲み込んでいる。ただ、やはり評議委員としての特権を利用してバス運転手後ろ、先頭右側の窓際席に自分の席を取った苦参。ちなみに清坂美里(きよさかみさと)は相対、左側先頭の窓際だ。上総の隣は当然羽飛貴史(はとばたかし)。美里の隣は古川こずえ。いつもながら分かりやすい席だった。一年時の席とほぼ変わらないではないか西洋人参。問題は、その間に菱本先生がいるということだ。通路のど真ん中に、補助席を敷いて坐りたいとのたまう菱本先生をさすがに蹴るわけにはいかなかった。あれでも一応、二年D組の担任だ。評議委員としてはうやまわないわけにはいかない烏賊骨。とにかく上総としては『絶対窓際』『車に酔わない』という最大条件をクリアしていればあとは問題なかった。多少のマイナス条件は覚悟していた。お前のクラスもずいぶん大変なんだろ?同情する目で本条委員長は上総を見た。男子はともかく、女子ってやたら仲良しがどうだとか、誰々がいいとか、いうだろ白朮。俺のクラスも相当なもんだけどな女子は清坂氏に全部まかせましたきっぱり、上総は答えた。お前、彼女に対するその言い方、いまだに変わってないな当たり前でしょう。何が変わるっていうんですかもう、まる一ヶ月経ったっていうのに五味子、全然あっちの方は進んでないみたいだしなあこの言い方、本当に腹が立つ。意地でもポーカーフェイスを装うことを決意した。はい、俺は本条先輩と違いますから青潟大学附属中学二年D組・旅のしおりは、三十五部、そろそろ出来上がる頃だった丹参。コピー機を使っている間は、枚数の多さにつくづくめまいを感じたものの結局、本条先輩が半分以上手伝ってくれた。空き教室でしばらくホチキスを使い、完成させてクラスのロッカーにしまいこんだ。こんなものを盗む奴なんていないだろう。出発当日に持ち出して配ればいいだけのこと。全く、立村もずいぶん細かいこと書いているなあ田七人参。規則魔って言われるぞいえ、うちの担任がうるさいだけです。でも後半はほとんど俺のオリジナルですからなになに?『クラス全員、エチケット袋(気分が悪くなった時に使うビニール袋)と空いたペットボトル、大判のタオルは必ず用意すること』って天竺黄。そんなことまで書く必要あるのか?いや、その前に質問として、なんだ?ペットボトルって気付かないのか、本条さん。上総は答えるのをためらった。おい、言いたそうなその目、続けろよ本条先輩は修学旅行の時、それのお世話にならなかったんですか俺は乗り物に強いからそんなことはなかった。でも必要最小限のものは用意しておいた茴香 。それよりもむしろ、休憩時間の間にみな、いったん外に出て乗り物酔いのクスリを用意しろとか、トイレにはきちんと行っておけとか、そういうことを優先しておいた近い、本条先輩あ?てことは、おい、まさか立村、ペットボトルって単刀直入に言ってしまうと益母草粉、簡易トイレの代わりです。できれば紙袋か何かに入れて突っ込んでおけばベストでしょう。そんなの使うことなんてないとは思いますが、万が一ってことは考えられますしね。で、タオルで膝をおおう感じにしておけば、そっちの修羅場からは逃れられるでしょうあのなあ、立村本条先輩は上総の頭を思いっきりぐりぐりと撫で回した。そういう知恵、どこでつけた?本条先輩は芍薬、バスの中で修羅場にあったことはないんですかお前はあるのかよ言いたくないが、答えるしかなかった。いつ、しくじってもおかしくない状況には追い込まれてましたけれど、幸い、この年までないですよ。ちなみに本条先輩何首烏、どうなんですか深い意味はなかったのだけれども、本条先輩の手は頭の上でぱたっと止まった。答えを探しているようだ。2ふたりっきりとみつどもえ青潟大学附属中学の二年次には、毎年クラスごとで二泊三日のちょっとした小旅行が行われる。通称『宿泊研修』と呼ばれている。一年は四月、二年は五月初旬と八月末山薬、三年は六月。こちらは修学旅行と名前が変わり、五泊六日の長丁場となる。クラスごとの旅行だから、日程もまた別々だ。確かC組は、七月の頭、夏休みを利用したときいている。しかし自分らのクラスD組では、涼しくなった頃に山査子しようよという意見が圧倒的だったこともあり、あっさり八月二十六、七、八日の3日間を指定した。評議委員である立村上総、清坂美里に行き先はゆだねられていた。あまり遠くないところを希望する上総だったが、美里の方から当帰、やっぱり、せっかく二日も泊るんだもの、思い切って遠くにしようよと押し切られた。でもさ、マイクロバスを使うんだぞ。俺、体力持たないって何言ってるの。立村くんがひ弱すぎるだけなのよ。少し鍛えなくちゃだめよ強く言えず、黄葉町に決定した。名前の通り紅葉美しく冬虫夏草、自然も豊か。それなりに観光施設も整っている。温泉もそれぞれ泊る所に蛇口から出るようになっているそうだ。古い和洋折衷の街並みが残っている町で、二日三日観光するにはうってつけの場所だった。名称・黄葉山と呼ばれる丘もあり鹿茸片、そこではちょっとしたハイキング気分も味わえるという。いかんせん美里の趣味にはぴったり合ってしまったようだ。八月末ということもあり、旅行客はそういない。学生旅行の割引も効く。ただ問題は青潟からバスで五時間という、距離の面だった胖大海。汽車が通っていないわけではないのだけれども、地元の交通機関だとかなり高くつくのだそうだ。計算が得意な美里は電卓を叩いて数字だけを上総に見せた。次にマイクロバス一台分の代金を計算した。想像以上の差額に、言うことを聞くしかなかったというのが、実情だった金銀花。八月末なのに、黄葉市は結構寒いって聞くよ。もしかしたら、紅葉が見られるかもねどうせだったらみんな自由行動にしてほしいよな。それはだめなんだろ。菱本先生が許さないんだろ上総が一番頭に来ているのはそこだった。本当だったら蓮子心、各班ごとに分かれて好き勝手なところを歩くのが楽しいと思う。女子男子関係なく仲のいい同士が集まれればそれがベスト。でも、別に今の班同士でも全く問題はない。なあに、南雲秋世(なぐもしゅうせい)がいるので一緒につるんでいればいい天麻。だがその案を持ち出したとたん、烈火のごとく怒り狂ったのが菱本先生だった。夏休み直前、ホームルームの時間に、また壇上の上でつるし上げを食った。だからお前はいつも、自分のことばかりしか考えていないんだ霊芝片!立村、いいかげん他人のことも考えろ!本当に俺は二年D組の評議をやってていいんだろうか。しかも、来年は一応、評議委員長になってしまうんだ。この様子だと、菱本先生は絶対に、俺を評議として認めてないよな。さらにむかついたのは、結局菱本先生の全員行動で山登りをし、全員でほのぼのと公園でバレクコの実ーボールをやろうという案を、クラス全員が飲んでしまったことだ。誰か、もう少し意見だせよ、と言いたかった。味方になってくれたのが、相棒であり現在『お付き合い』の相手である清坂美里、仲のいい羽飛、南雲、くらいだろうか花旗参鶏スープ。なんで俺ばっかりいつもつるし上げくわなくちゃなんないんだよいいじゃない、どうせみんな坐る場所は別々なんだから。どうして立村くん、そんなにクラス旅行を嫌がるの?深いため息をついて、上総はつぶやいた。俺は遠足、修学旅行大棗、みんな熱出して欠席してきたんだ。どういうことかわかるだろまさか、立村くん美里はゆっくりと、遠慮がちに、おねしょがまだ直らないとか?違うって。とにかく前日になると、三十九度くらいの熱がでてうなされて、目が覚めたら出発時刻ってパターンなんだよ本当のことだから堂々と言える。美里も慌てて上総に、両手を合わせて謝ってくれた祁門紅茶。ごめんね、私の通っていた小学校の修学旅行で、おねしょが直らない人がいて、結局出なかったってことがあったからいや、それはたぶん、人によってあると思うな上総は思い出して、また頭を抱えた。そうだよ武夷大紅袍 武夷肉桂。その問題があったんだよあの、ねえ、立村くん、別に私、立村くんがもし、まだ直ってなかったって言っても、ね、あの周りをちょこっと見回してから、上総の耳元にささやいた。付き合いやめるなんて、言わないから、安心して三回目のため息だ。上総は怒る気力もなく首を振った。だから、俺のことじゃないんだって清坂美里に『付き合い』をかけられてからまるまる二ヶ月が経った。一週間自分なりに獅峰龍井『付き合い』の意味を、貴史、南雲、本条、そして美里に教えてもらい、今では二年D組の公認カップルとして自然に接しているつもりだった。『立村くん』『清坂氏』と呼び合う間は、特に変わったこともなかった。ただ、帰り道ひとりでいるとあれ君山銀針、彼女はどうしたのと声を掛けられたり、また菱本先生に呼び出され、暗に男子と女子の感情は違うものだから、気をつけるようにと説教されむかついたり。自分が思ったよりも周りに変化はなかった。二年D組公認カップルの先輩である南雲からは、たまには都均毛尖、二人っきりで遊びに行く必要もあるかもしれないよ。もしなんだったら、夏休みにダブルデートしようかと誘われたりした。個人的に南雲ともっと話をしたい気持ちはあったので、ありがたくお断りした後、今度俺の家に遊びに来て信陽毛尖、思いっきり語り明かそうかと、別のお誘いをした。夏休み中なのに、実現していない約束だ。本当は、夏休みもっと、美里と会ってもいいのだろう。付き合っている同士なんだから。でも、身体の調子が許さなかった。もともと上総は身体が弱い西湖龍井茶 。夏になると高熱を出してしょっちゅう倒れる。海辺に出かけるなんてもってのほかだし、泳いだりするのもそう好きじゃなかった。なによりも、真夏だというのに、長袖の羽織が手放せない体質というのにすべての問題がある。ふたりっきりで会えないかわり、羽飛貴史を含めた三人組ではよく集まったものだった。もちろん今回のクラス旅行にかこつけて碧螺春、いろいろな準備やシナリオ作りなどが中心だった。遠くから来ている子、実家に戻っている子、たくさんいる。そういう人たちにも連絡を取るべく、連絡網を便りに希望を取った。女子と男子が別々なのはかなり気が楽だった。上総はただ、男子連中への六安瓜片『席の場所希望』と『注意事項』を電話で伝えればいいだけのことだった。三日に一度は顔を合わせ、たまに美術館に連れて行かれたりしたものだった。同じ年だというのに、美里も貴史もやたらと絵に詳しかった黄山毛峰。上総がぼんやりと、きれいだつまらないの二言で片付けてしまうような絵を、ふたりは猛烈なスピードで盛り上がりまくっていた。もちろん難しい絵画用語を使ったりはしない。ただ、これを見ていると理科の先生の鼻の穴を思い出すよなこの絵は大きくポスターみたいにして、べたべたべたって貼ってみたいよね黄山毛峰!と、想像を絶するのりでしゃべりつづけていた。後で聞くと、子供の頃からふたりとも美術館で騒ぐのが大好きだったらしい。なんだか迷惑な客なんじゃないかと思いつつも、ふたりの話題を聞いているだけで、上総は面白かった。たとえ半分以上言葉が故園香緑茶、自分の中にある言語と異なっていても、かまわなかった。答え方が分からず、帰ってから自分の感覚が鈍いことに落ち込んでも、その場では見せないと決めていた。あのね、立村くん、ひとつだけ言っておきたいんだけど。これは貴史のいない時に、って決めてたんだけどねふと、ふたりっきりになった時、ささやかれた言葉怡清源緑茶。私、立村くんが、外国の本とか小説とか、そういうものについて話してる時、いつもすごいって思ってるんだからね。私、あまりそういうのわかんないけど、でもでも、絶対に、ばかにしてないからねやっぱり、絵画のことがわからないということを、気にしていると思われているのだろうか。上総は曖昧に頷いて、ありがとうとだけ答えた。安渓清香鉄観音茶 そしていつもその後思う。いつまで、三人でいられるんだろうか。いつまで、ふたりの仲間に入れてもらえるんだろうか。朝六時に青大附中前に集合した。旅行終了後、次の日からなしくずしに始業式が始まることもあり、各地の下宿生たちもみな実家から帰ってきていた。一ヶ月ぶりの再会とあって、女子の中には手を取り合っ清香黄金桂鉄観音て大喜びしている姿も見受けられた。男子はというと、青潟市外の海で焼いたらしい肌を見せつけて、腕をぼりぼり掻いていた。せめて、制服じゃない形にしてほしかったよな。普通のTシャツとかさまだ夏休み中なんだから、私服だっていいのになんで清香安渓鉄観音、ネクタイまで持参なわけなんだ意味不明な校則の数々を改善するべく使命をおびた、次期規律委員長南雲秋世(なぐもしゅうせい)の姿もあった。聞きつけたのか、あごの先で頷いて答えた。そうだよな、俺もそう思う。学校始まったらすぐに規律委員会開い安渓鉄観音てもらうようにするよ相変わらずシャギーの髪型は変わっていない。もし微妙に変化したところがあるとするならば、つきあい相手の奈良岡彰子を目で探して、見つけるなりにっこりと笑いかけているところだろうか。笑顔が一段、南雲は自然だった香茶王。戸惑っているのは奈良岡の方だった。周りの女子に彰子ちゃん、愛されてるよねとからかわれているのが聞こえた。ところで、立村、このしおりの通り、持ってきたけれどさ、なんなんだ、ペットボトルって羽飛貴史が上総に尋ねた。やっぱり緑茶、普通の発想ではないらしかった。上総にとっては自分の身を守るゆえに、絶対必要なことだったのだけれども。でも説明するとまた、お前ってば大げさなんだかださあ、もう俺たち中学生なんだぜ、そんなしくじりする奴なんていねえよと笑われるだけだろう。ま、使わなければそれに越したことはないんだから。ただ中国の茶、万が一ってことは考えられるわけであって。一寸先は闇。いや、たいしたことじゃないよ。それよか、羽飛、もし俺が酔ったら、その時はごめん。申しわけない。できるだけ気を付けるつもりだけどさ今のうちに謝れることは謝っておこう。これから三日間中国の十大銘茶、隣の席にいるであろう貴史に手を合わせた。立村って自分で酔う酔うっていっつも言っているけど、へどあげたことなんて一度もないだろ、心配性な奴だよなこいつ、わかっていない。いまさらながら上総はあきらめていた。羽飛貴史はいい奴なのだ中国の茶文化。無口な上総をいつも、クラスでフォローしてくれ、いろいろなことがあっても変わることなく仲間に入れてくれて、さらには幼なじみの清坂美里との恋路も応援してくれている。いつも俺は立村の味方なんだよということを、どこかで伝えてくれている薔薇花茶。こんな性格のいい、奴なのだが。上総にはどうしても受け入れられない部分がある。自分の友達である以上のことを、さらに求めようとするところだろうか。上総にさらに、自分の感情をさらけだすよう、求めるところ。きつい。悪意がなくて、誰よりも自分を大切に思ってくれていることがわかるから、何もいえなくて金銀花、さらに辛い。親友という扱いをされていながら上総は、いつも口をきけないでいた。どんなに今まで上総が、旅行の時に気をつかっていたかなんて、たぶん貴史は分からないにちがいない。酔い止めを飲んで、窓の空気を吸うためへばりつき、いつも吐き気をこらえていたなんて、気付かないのだろう。俺の味方でいるなんていう奴を、どうして素直に受け入れられないんだろう。最低だ、本当に最低だ桂花茶。整列し、菱本先生に軽く挨拶をした後、男子、女子の順に乗り込んでいった。女子同士二名ずつの組に分けるのはそう難しいことではないようだった。後ろの席だけが三名ずつになって男女セットになってしまった。が、どうもその玖瑰花茶後ろには奈良岡と南雲の二人が坐っているらしい。どう考えても、南雲の意志だ。いくら付き合っているとはいえ、こうも露骨にいちゃいちゃぶりを見せ付けられるのも、なと思う。でも南雲としては当然のことなのだろう。上総たちよりも一ヶ鳳凰単叢月くらい早く両思いになったふたりだが、周りからは外見上つりあわない究極のカップルと言われている。南雲が女子受けするようなアイドル歌手雰囲気の顔立ちなのに対し、奈良岡彰子はかなりぽっちゃりめだ。一部の男子いわく、ビール瓶というのも頷けなくはない菊花茶。でも、顔立ちはまるっこくて、南雲の言うとおり一般受けはしないかもしれないが、俺にとっては完璧だなのだそうだ。男女関係なく気持ちよく接してくれる女子だから、性格に惚れたといえばそれまでなのだろう。が、南雲の様子を見るとどうもそれだけではない。外見内面ともに、満足度百パーセントらしいのだ鳳凰単叢。もっというなら、南雲の想いの方が圧倒的に高い。奈良岡彰子の方は戸惑いがまだ完全に消えていない。断然、南雲の想いにひっぱられている状況が、この夏も続いていた。上総は南雲の坐っている奥まで進んで確認した。じゃあ、なぐちゃんはここでいいか秋香黄金桂?もしなんだったら変わるよいいってりっちゃん。これ以上贅沢なんて言いますかって奈良岡彰子に向けるぱかっとした笑顔を、上総にもそのまま見せて、南雲はポケットから小さな子瓶を差し出した。りっちゃん、これは結構、酔い止めに効くと思うよ、薄荷の匂いがするかぎ薬だって。うちのばあちゃんから借りてきたでも、それはまずいんじゃないか安徽貢菊王?お前だってそう強いほうじゃ大丈夫さ、俺には最高の酔い止めがいるからさ隣で奈良岡彰子は困りきった顔で南雲を見つめていた。ほら、立村くん、凍りついているじゃない。とにかく、この席で大丈夫だから立村くんも、あまり気にしなくていいよ目で早く毛蟹、前に戻りなよという表情だった。読めないほど上総も馬鹿じゃなかった。。じゃあ、なにはともあれ2毎度恒例『朝の漫才』バスガイドさんはいない。バスの中はそれなりに余裕のある雰囲気だった。菱本先生の音頭でまずは、景色を眺めつつしおりでの合唱だ白毫銀針。たいていはカラオケつきだ。マイクを持つだろう。でも菱本先生の意志で、すべてカットとなってしまった。そういうところにはお金をかけないで、自分たちでバスの中を楽しもうということだそうだ。しかたないので、音楽委員ふたりにしきってもらい、しおりに載っている歌を一曲ずつ、合唱することにした。歌謡曲もあれば茉莉花茶 、教科書に載っているのもある。マイクを持ったまま合唱に燃えている。上総にとってはそれこそうるさい以外のなにものでもない。盛り上げ係は幸い、貴史と美里がいる。悪い、ちょっとだけ空気吸ってていいか?細く窓を開け、上総は外を眺めていた。バスを降りるまでの間は、評議委員としての仕事はまずお休みだ白牡丹。これがもし学校祭とか合唱コンクールだとまた話は違う。行事が終わるまでの間ずっと、気を張り詰めていなくてはならない。上総の場合自分でも、かなり神経質すぎるところがある。さって、では、次は、山を越えてゆこうよでいこう英山雲霧!まだ歌謡曲の順番は回ってきていないらしい。元気な羽飛・清坂コンビの声を聴きながら、上総はいつのまにか眠りについていた。たぶん、酔い止めが効いてきたのだろう。かちゃり、と音がしたので目を覚ますと、二時間くらい経ったらしく一部の三峡碧峰グループが静かになっている。さほど揺れた記憶はなく、上総も風に当たってすこし寒気を覚えていた。今、どこまで来ている?まだ山を昇っていないよ。サービスエリアにそろそろ到着するころだな菱本先生が答えた。貴史に聞いたつもりなのに廬山雲霧。できるだけこの先生とは口をききたくなかった。でもそんなわけにもいかない。本当にこの先生とは相性が合わない。どうしてだろう。窓から見える景色は銀紙がかっておいて、ところどころ工事中の山切り崩した跡などが見受けられた。その奥には黄土色の山壁。すっくと細長い木の群れが固まって生えている。緑色が濃く茉莉白龍珠、天に突き刺すような雰囲気だった。なんていうか、きりたんぽって感じかななにがだよ、あの木がか?やたらと細長いよな別に意味は何にもなかった。おなかがすいてきたので、サンドイッチを取り出した。大きい声ではいえないが、現在親からもらった小遣采花毛尖いおよび生活費がほとんど切れている状態なので、買出しができなかった。バターをぬって薄切りのハムを挟んだだけのものだが、ラップに包んでハンカチにくるんできた。開発途上の場所ってところなのかな。この辺は食べながらぼんやりと眺めているところに、古川こずえが声を掛けてきた。今は朝。ねえ、立村君山毛尖、いまあの木のことをなんとかぽっていわなかった?ああ、きりたんぽって知ってるだろ。秋田の名物料理。ご飯を筒状にして穴をあけて、それをかためてゆでて食べるって奴。作っているときの状態によく似ていたからさ意味はないはず。ふうん黄山毛峰、『タンポン』ねえ、立村、どういうものだか知ってるよねえ。美里も教えてるでしょ、そのくらい窓を見たまま頭は真っ白くなった。いや、知らないわけじゃなかった。ゆっくりと言い返した。古川さん、あんたの耳の方がおかしいんでないか。俺は今、『秋田名物料理のきりたんぽ』って言ったよななあに向きになってるのよ霊芝茶、あんたってほんっと、いまだにガキだねえ。お姉さんは頭が痛いってよばかばかしい椅子の間も離れているし、今日はそれで朝の寸劇ちゃんちゃんのはずだった。が、唯一うるさいのがいる。貴史がつんつんとつついてきた甘草茶。なんだ、その『タンポン』って?知らないのか?ああ、俺、その辺よくわからねえよ残念ながら、古川さんのように本体を見たことないので、そうなのかどうかはわからないけどさむかつきついでに、古川こずえに聞こえるように言い返した杜仲茶。立村くん!ちょっと、いったい何言ってるの?あの、だから、羽飛にきかれたからだからって、いったい美里が端の席から上総に向かって猛烈に反撃を開始している。戸惑う上総に今度は貴史が迎え撃った。お前、何切れてるんだよ。俺、知らないんだけどさ、その『タンポン』ってなんなんだ?話がよめねえんだそんなこと鉄羅漢、こんなおおっぴらに話すことじゃないじゃない。こずえもこずえよ。なんで朝から変なことまたつっかけてるのよ。それにふたたび美里は上総をにらみつける。びくっとしながら、窓辺に張り付く。立村くんも立村くんよ。そんな声で言わなくたって!ごめん、俺が悪かった雪茶。ごめんだからあやまらないでよ。私が悪いことしているみたいじゃない!じゃあ、どうしろっていうんだよどうもしないけど、でも、変なこと言わないでよ、もう以上の会話は、奥のグループに全く届かなかったようだった。雲行きは怪しい。他の連中はそれなりにいろいろな盛り上がりを見せているようだが、上総と貴史はしばらく小声で女子って桂花烏龍茶 、怖いよな本当に、怖い。うっかりしたこと、言えねえな。でも、まじめに『タンポン』ってなんだ?俺も見た事ないから、わからない。今度本条先輩に聞いてみるよ隣で居眠りをしたふりをしている菱本先生。こいつは絶対聞いている人参烏龍茶。今の会話もすべて聞いている。実はそちらのほうに、思いっきり腹が立ったのもまた事実だった。バスは第一次ターミナルに到着した。降りた時、風のひやりとした冷たさが首筋に触れた。みな、ジュースを買いに走るものあれば、トイレに化粧ポーチを持っていく女子ありと、実にさまざまな連中だらけだった。まだ二時間程度だから酔った奴もいない苦丁茶。上総と貴史は用を済ませた後にすぐバスに戻った。天気よさそうだから、それなりに盛り上がるんじゃないかなそうだな。立村もかなり無理しまくってたしな。それよかさ、お前、美里とどこまで行ったんだ?今の調子だとまだ全然進んでいねえみたいだけどまだ恩施玉露 一ヶ月だぞ、何考えてるんだよ三人で会う時も、上総はいつも恋愛の匂いをできるだけ嗅がせないような振る舞いをするよう勤めていた。ふたりの時はほんの少しだけ、自分の中にある感情を、ちょこっと出してみたりもする。一歩近い感じで、冗談を言ってみたりもする雲南小沱茶。美里もだんだん、上総に対して以前のように気を遣うこともすくなくなり、かなり際どいネタふりをしてくるようにもなった。だが、あくまでも、ふたりの時だ。手が触れたったって、一回だけ、たまたまドアのノブをひねる時に指先が重なっただけのこと。それ以上は全く何にも触れたりなんてしていない。ましてやキスやそれ以上何てもってのほか東方美人。それを言うならだ。羽飛、現在の一年生とはどういう付き合いをしているんだ?付き合ってなんかねえよ。きちんと俺は断ったぞ。だが、相手がそう思ってないみたいなんで、九月までようすを見るかってことで、一回くらい会った程度だって断った相手に会うって奴か少しむっときて上総は言い返した。それはちょっと太平猴魁 、失礼じゃないかだってさあ、相手なんて話を全然していないだろ。俺の場合は一回でもしゃべらないとピンとこないんだよ貴史の言うことはわからなくもない。特別に好きでも嫌いでもないという状態だったら、ためしに付き合ってみるのも一つの手だろう。実際、上総はそういう気持ちを残したまま、美里とはじめてのおつきあいを始めている決明子。ただ、貴史にはどうも、カモフラージュの匂いが消せない。もしこれが、古川こずえだとしたら話は別だっただろう。上総としては、授業中の下ネタ振りにほとほとまいっていたので、いいかげん貴史とくっつけて、おとなしくしてほしいと思っていた迷迭香。それなりのお付き合いでもいいだろうと思う。しかしながら、告白された一年生については、どうも気がなさそうなのだ。いろんな考え方はあるだろうが、好きになら女性との交際だけは避けたいと思っていた。最近、南雲の恋愛観に感化されているかもしれないが。どうせお前らとは違うんだからな。立村、お前も人のこと気にしてる暇があったら、美里をもっと口説いてなんかしろよ人にそんなこと言われたくないね上総は軽く受け流し洋甘菊 、しおりの日程を読み直した。黄葉市に到着するのが、十時くらいか。それから荷物をホテルに預けて、昼からバレーボール大会か。やってられないよなその後で、街並みめぐりとくるわけだな。三十人ぞろぞろぞろと歩くわけかよ。みっともねえよな。もっと遠くから来た奴ならともかく、青潟なんて言ったら、近いし康乃馨、制服姿だろ。恥ずかしいよな全くだ。菱本先生の考え方はどうしても、納得いかないよな貴史が頷く頃に、菱本先生がジュースを持って帰ってきた。お前ら早いなあ、おい、立村、外の空気吸わないで大丈夫なのか一度外に出ま紫玖瑰花茶したからわざと冷たく反応する。最低限の会話のみ、にとどめたい。教師としても、また一人の男として、生理的に好きになれないタイプだった。






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